完成後の建物は、木の香りに満ち溢れていました。ヒノキ材を貼った床、スギ板貼りの天井など、無垢材がふんだんに使われています。柱と梁、建具などは既存のものを生かすなど、古いものと新しいものが見事に融合。リフォームにあたり敷地内にある土蔵から出てきた書院風の建具を有効利用するなど、手塚家〝らしさ〟も存分に表現されています。
「現代の家は壁で仕切られていますが、昔の家は建具を開け放つとひとつながりの大空間が現れます。この開放感が最大の魅力ですね。天井も梁が剥き出しとなり、日本家屋ならではのディテールがより一層感じられるようになりました」とご主人は満足げ。自身にとって大切な場所が、奥様や娘さんたちの協力によって実現したこともあり、よろこびもひとしおです。
完成後、ご近所に住む方々が新しくなった手塚家を見に来たそうですが、そのとき祖母の友人から、祖母そして祖父の思い出話や、手塚家の歴史・出来事などの話を聞いたそうです。そのとき2人の娘さんは、ご近所の人たちは手塚家の建物に愛着を持っていることを実感しました。同時に、父の実家を次世代に受け継いでいく使命感を強く感じたそうです。「古民家再生を決断して本当に良かった」と感想を語ってくれました。
家族のみならず地域の人々にとっても価値のある古民家再生プロジェクト。その思いは100年先の未来へと受け継がれます。